室内循環システムを冬季に使用した場合、フライヤーなどからの放熱により温められた空気が、ある程度の温度を保ったままリターン(循環)してくるため、外気を取り入れるより暖房費用の負担が少なくなることが予想できます。
一方、夏季の場合は放熱による熱い空気がリターンしてくることから、冷房費用の上昇が心配されますが、実際はどうなのでしょうか。
早速、電気式フライヤー、ゆで麺器がある場合の負荷を見ていきましょう。
条件
厨房面積(床面積) | 4mx2.5m=10 ㎡ |
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夏季 | 冬季 | |
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1㎡あたりの概算負荷(Kcal/h. ㎡) | 130 | 180 |
夏季 | 冬季 | |
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外気温度(℃) | 34 | 2 |
室内温度(℃) | 24 | 22 |
温度差(deg) | 10 | 20 |
フライヤー の放熱量 |
フライヤー油面積: 0.36mx0.45m= 0.162㎡ 油面からの放熱損失係数(※1): 2.8kW/㎡=2,400Kcal/h. ㎡ ◆放熱量: 0.16 ㎡ ×2,400 Kcal/h. ㎡=384≒380 Kcal/h |
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ゆで麺器 の放熱量 |
ゆで麺器面積: 0.2m×0.2m×π= 0.126㎡ 湯面からの放熱損失係数(※2): 4.65kW/㎡=4,000Kcal/h. ㎡ ◆放熱量: 0.13 ㎡ ×4,000 Kcal/h. ㎡=520Kcal/h |
※1 油面からの放熱損失係数:170〜180℃の場合
※2 湯面からの放熱損失係数:98℃前後の場合
フードによる換気量 | 通常排気フード゙寸法: 1.2m× 0.8m
ショートサーキット率:30% フード゙面風速:0.4m/sフード゙による換気量: |
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法令基準による最低換気量 (建築基準法施行令第20条の2) |
V=20Af/N
V=20 × 10/3=66.7 ㎥ /h≒70㎥/h |
計算式
夏季における冷房負荷 | 外部排気仕様 |
室内循環仕様 |
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一般負荷 | 130Kcal/h. ㎡×10㎡= | 1,300 | 1,300 |
外気負荷 (※7) |
0.24×1.2 ×(970+70) ㎥/h ×10deg= | 3,000 | 0(※3) |
油+湯面からの放熱 | 380Kcal/h+520Kcal/h= | 0(※4) | 900(※5) |
計 | 4,300Kcal/h |
2,200Kcal/h |
冬季における暖房負荷 | 外部排気仕様 |
室内循環仕様 |
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一般負荷 | 180Kcal/h. ㎡×10㎡= | 1,800 | 1,800 |
外気負荷 (※7) |
0.24×1.2 ×(970+70) ㎥/h ×20deg= | 6,000 | 0(※3) |
油+湯面からの放熱 | 380Kcal/h+520Kcal/h= | 0(※4) | -900(※6) |
計 | 7,800Kcal/h |
900Kcal/h |
※3 外気からの通気はないため、“0(ゼロ)”
※4 室内に熱が逃げずに、外部排気されてしまうため、“0(ゼロ)”
※5 熱は循環型フードに吸われるが、リターン(室内循環)で100%厨房に戻り、熱量が減らないため
※6 この熱量が暖房の熱として取り込まれるため
※7 Q =0.24(定圧比熱Kcal/Kg.deg)×1.2(空気の比重量Kg/ ㎥ )× V(換気風量㎥/h) ×Δ(室内外の温度差deg)
結果
上記条件による計算の場合、リターン型のフードは冬は温かい空気が戻ってきますので、特に寒冷地ではその恩恵が大きくなり、外部排気型に比べ暖房負荷は約1/8になります。
一方、冷房費用の上昇が心配された夏季においても外部排気型のフードに比べ冷房負荷は約1/2という結果になりました。気温が高くなればなるほど、やはりリターン型の方が恩恵が大きくなります。